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        2013-04-17       ツリーボア属(genus Corallus)の進化の変遷

アマゾンツリーボア Corallus hortulanus

先日、Groveling thingsの化野さんにツリーボア属の分子系統の論文が出たと教えてもらったのをふと思い出し、
今日の東邦大での実験の待ち時間に論文PDFを落として、メモを取りながら読んでみた。
もうちょっとこんな解析をしてみたらとか、細かい意見はいろいろあるが、コンパクトにまとまって非常に読みやすい良論文だと思う。


Colston et al., 2013
Molecular systematics and historical biogeography of tree boas (Corallus spp.)
Molecular Phylogenetics and Evolution, in press
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1055790312004782(別ウィンドウで表示)

Corallus属(ツリーボア属)は南米大陸内で複数回の放散進化を遂げてきたことを分子データから示した論文。
要旨を簡単にまとめてみた。

(1)
まず、南米大陸から中央アメリカ、さらに小アンティル諸島まで広く分布するBoa属(ボア属)から、
同様に広く分布するEpicrates属(レインボーボア属)とEunectes属(アナコンダ属)が分岐し、
次いで南米大陸内で約4,900万年前の中期始新世にCorallus属(ツリーボア属)が分岐した。

Corallus属内では、南米大陸内のみに分布するC. caninus(エメラルドツリーボア)とC. cropanii(クロッパンズツリーボア)から
C. annulatus(リングツリーボア)が分岐し、後者は南米大陸北西部から中央アメリカまで分布域を広げた。

次いでC. ruschenbergerii(セントラルアメリカンツリーボア)とC. hortulanus(アマゾンツリーボア)が分岐し、
前者は南米大陸北東部から中央アメリカまで分布域を広げ、後者は北部の個体群の一部が小アンティル諸島まで分布域を広げた。

後者の小アンティル諸島の個体群がC. cookii(クックツリーボア)とC. grenadensis(グレナディアンツリーボア)だが、
この両種(両亜種)は系統樹上でアマゾンツリーボアの枝に内包される形であり、さらに遺伝的分化の程度も著しく低い。


(2)
リングツリーボアが南米大陸から中央アメリカまで分布域を広げたのは、パナマ陸橋形成以前の後期中新世、約1,000万年前であり、
これはおそらくアイランドホッピングなどによる海を越えての分散である(migrateではなくdisperseを使っているので“分散”とした)。

一方、セントラルアメリカンツリーボアが南米大陸から中央アメリカまで分布域を広げたのは、約150万年前の更新世、
パナマ地峡形成以前にパナマ陸橋を伝って分散したと考えられる。

アマゾンツリーボアの南米大陸北部の個体群の一部が小アンティル諸島に渡ったのは約200万年前の前期更新世と考えられる。
この分散は海を渡ってのものであると推察される。


(3)
この研究ではミトコンドリアDNAの2つの遺伝子(cyt b, 12S)および核の3つのタンパクコード遺伝子(BDNF, NT3, c-mos)を解析している。
系統関係の解けなかったアマゾンツリーボア、クックツリーボア、グレナディアンツリーボア3種については、
それぞれの遺伝子の単独配列および結合配列両方で解析したが、やはり結果は同様だった。
用いた核の3つの遺伝子の進化速度あるいは保存性がどの程度なのかは分からないが、ミトコンドリアなら調節領域、核なら変異性の高いイントロン領域かマイクロサテライトなどを用い、
さらにもっと多くの個体数を用いて解析する必要があるだろう(今回アマゾンツリーは8個体用いているが他2種はそれぞれ1個体)。
この3種に関しては系統解析というよりコアレセントモデルを用いた集団遺伝学的解析という形になると思う(論文中でもそう指摘している)。
まぁ今回の結果を見る限り、クックツリーとグレナディアンツリーは、せいぜいアマゾンツリーの亜種あるいは地域個体群とするのが適当という結果になりそうだが。

この論文で示された系統関係は下記の通り。
基本的に形態形質に基づく系統関係を支持するものとなっている。

(((((((C. hortulatus + C. cookii + C. grenadensis) C. ruschenbergerii) C. annulatus) C. cropanii) C. caninus) (Eunectes + Epicrates)) Boa constrictor)


(4)
この論文のポイントは下記の4点。

・パナマ陸橋形成以前から形成後にまたがり、南米大陸を起源とするCorallus属は、複数回の過程を経て中央アメリカと南米大陸間で分散してきた

・しかもそのうちのいくつかは陸伝いではなく海を越えてのものであった

・これらCorallus属の生物地理学的パターンは、新大陸の他の有隣目や両生類などとよく似たパターンである

・ただし、ヤドクガエル類で見られるようなアンデス山脈の隆起が集団拡大あるいは分散の障壁になることはCorallus属に関してはなく、
 その代わりに第三紀における分集団間に南米大陸で繰り返し起こった海を越えた分散(本文では“侵入”)が、Corallus属の分散・多様化あるいは種分化の大きな原動力になったと考えられる


写真
有隣目 ボア科 アマゾンツリーボア Corallus hortulanus hortulanus
D700 + AF-S Micro Nikkor 60mm F2.8G

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